健康で生きる力をつける講座
2018年9月8日

​「健康な加齢」と予防の大切さ

​-105歳の日野原重明先生を看取って-

​聖路加国際病院院長

​福井 次矢 先生

【泉大津市立病院 検査・病理センター長 四方 伸明 先生】

 

本日は聖路加国際病院の院長である福井次矢先生にお越しいただきました。先生の御略歴を申し上げますと、1976年に京都大学医学部を卒業された後、聖路加国際病院で4年程研修をされました。その後、日野原先生のお勧めもあり、アメリカに留学されました。コロンビア大学、それからハーバード大学の公衆衛生の大学院を修了されました。その後、日本に戻られた後、九州の佐賀医科大学附属病院総合医療診療部の助教授、そして教授と進まれました。

 

実はその時、私と縁がありまして、私は関西医科大学にいたのですが、毎夏、学生達の教育・トレーニングを行なうワークショップ形式のプログラムがあり、その時、当時佐賀医科大学の教授でおられた福井先生に来ていただきました。

 

その後、福井先生は京都大学の総合診療部の教授に着任され、10年間過ごされた後、2005年から聖路加国際病院の病院長、理事長そして大学の学長を務められ、聖路加国際病院で活躍されています。

 

それで関西医科大学の中で、その20年程経ったときに、私は60歳前だったのですが、ちょうど順番で専門医指導医講習に出るように言われまして、もういい年なのにと思いながら、若い先生達と一緒に関西医科大学のプログラムに出まして、その時にも福井先生に来ていただきました。

 

福井先生は毎年秋のその合宿に来られていました。そこへ、この石垣院長から「ぜひ福井先生にお話がしたい。四方先生、何かご存知ないですか?」と言われ、10月になればまた関西医大に来られるかもしれないと思い、当時の総務課長に連絡したところ、福井先生が来られるということでしたので、ぶしつけではありましたが、お願いした次第です。なぜ石垣院長が福井先生にお話がしたいと思われたのかは、直接石垣院長にお話していただこうと思います。

【たまごビル院長 石垣 邦彦 先生】

では、その馴れ初めをお話させていただきます。現代医学の素晴らしさをどう生かすか、あるいは現代医学が陥っている問題点をどう解決するかという話の中で、思っていたことからなのです。実際は、もっと大きなことをお話させてもらいますと、『人は楽しむために生まれてきた』という理念をたまごビルは持っています。それはどういうことかといいますと、宇宙の創造から、地球の生成、生き物が生まれ、人類が生まれてきたことを俯瞰してみると、人間というのは恵まれた存在だなと、ありがたいと、今奇跡的にある存在だなと感じ取ってきたわけです。それで、どう生きるべきかということになってきますと、苦しいことのほうが多い社会ですが、恵まれた存在であるということから捉えますと、やっぱり人は楽しむために生まれてきたのではないかという結論に達しました。そうすると、『人は楽しむために生まれてきた社会』をつくろうと、私どもは末筆ながら、医療の分野から出発しておりまして、医療の分野から『人は楽しむために生まれてきた社会』をつくり、貢献させていただこうではないかということになりました。

 

そうすると、病気を治すということは非常に素晴らしいことです。しかし、もっと人が楽しむためには予防しようではないかと、さらに、予防は素晴らしいが、もっともっとということになると、元気な子どもを育てようではないかということになりまして、それでは保育園をさせていただこうではないかということになりました。そうこうしているうちに、ずっと温めてきたのですが、生まれて、生きて、成長して、子育てをして、老化して、死に行くことについて、これらがうまく運ぶ原理原則のようなものがないのかなと思っていると、あるのですね。体の仕組みがスムーズに動く状態を作ってやると、生まれて、生きて、老化して、死に行くことがうまく行く道があることがわかりました。そのきっかけを作ってくれたお一人が福井次矢先生なのです。

そのきっかけが、平成17年11月号の科学雑誌『ニュートン』で、ある記者が福井先生にこういう質問を投げかけたのです。「分子生物学が全盛の21世紀において、科学で何でもわかりそうな今の時代に、なぜ医学的な信用度のグレードが高いランダム化比較試験というデータに基づいて、ガイドラインが作られているか」と。これに対して、福井先生は端的に仰ったのです。これを聞いて、私はすごい人だなと、目から鱗の話でした。「なぜ疫学的なデータが医学的なEBMの第一位になるのかというと、端的に言うと人の全体像がわかっていないことにつきると思います。とりまく環境と人体の複雑さゆえに、ある要素が変化したときに、人間の体にどのような変化がおきるのかを特定できない。そのため、医学において検査や治療の効果を判定するときには原因と結果の間にあることを全部ブラックボックスにして、統計学的手法を用いる以外に選択肢がありません。」と、こう仰ったのです。これはすごいことを仰る方だと思ったのです。そこで、私は全体像をつかむにはどうしたらよいか、2番目はある要素、例えば台風が来たとか悩み事があるとか、あるいは嫁さんに怒られたというときに、体にどのような変化が起こるのかということを特定できるようにしないといけないなと思ったのです。そうすると、原因と結果の間にあることをきちっと把握できるし、把握することによって経過を明らかにすることができ、その時点で対応できるのではないかということで、平成18年1月1日号より、そこにおられる河内新聞に連載をすることになりまして、先月号で139回目となりました。1面を使わせていただいて、ずっと疑問点を掘り起こしていきました。そうすることで出てきた一つの回答が、上腹部、みぞおち部分の柔らかさを基準にすれば、全体像と人間の体における変化、経過をはかることができるのではないかということです。

それを臨床に応用していき、また現代医学的な検査・診断法とも絡ませて、もちろん東洋医学的な診断法とも絡ませていくと、非常にはっきりとしたものが出てきました。上腹部が柔らかい状態では、呼吸も、循環も、自律神経も、人体力学も、内臓全体の動きもスムーズです。そうすると元気に生きられます。保育園の0歳児を見ていても、上腹部が柔らかい子どもは元気です。上腹部が膨満して硬い子どもは非常に発育が悪い。上腹部が柔らかい状態を作ってやると、非常に生き生きと生活できるようになります。予防ができる、的確な治療・ケアーができます。そうすると現代医学との兼ね合いをしながら、現代医学の素晴らしさを活かしつつ、体の仕組みも活かしつつというところで穏やかな死を迎えることができます。

 

7/14には介護予防というテーマで、そこにおられる山田さんのお話を聞いたり、死の看取りのお話を聞いたりしましたが、皆痛みなく過ごすことができます。そういう意味で現代医学の素晴らしさを活かし、現代医学が陥っている穴を解決するきっかけを作ってくださったのが福井次矢先生です。私との馴れ初めはそういうことです。

 

それでは、福井次矢先生、よろしくお願いします。

【聖路加国際病院院長 福井 次矢 先生】

ご紹介いただきました福井です。よろしくお願いいたします。私の話は4つの部分に分かれます。最後に面白い研究を一つだけ紹介させていただきたいと思っておりまして、社会とのつながりというのは、どういう側面で、何をもって社会とのつながりというのかは色々とありますけれども、興味深いと思いましたのは、患者さんを2つのグループに分けまして、同じお金を自分のために使う人達とそのお金を他の人のために使う人達に分けると、元々あった高血圧のレベルが、なんと人のために使うグループで明らかに低下したという研究がございまして、社会とのつながりの一つの側面で興味深い研究だと思いまして、最後の方でそういうお話をさせていただきたいと思います。

1.日野原先生の短い「晩年」

最初は105歳まで生きられた日野原先生がどのような生活と言動をされ、傍にいる我々がどのようなことを学んできたかをお話したいと思います。先生はものすごくたくさんの本を書かれていますので、読まれた方もいらっしゃるのではないかと思いますが、先生はこういう方です。

先生は、1911年に山口県でお生まれになり、1941年の戦争が始まる3ヶ月前に京都から東京に移られて、そこからずっと聖路加国際病院で仕事をされました。途中で文化功労者、文化勲章を受章されて、昨年の4月18日に亡くなりました。

普通の血管を輪切りにしますと、中に血液が流れていますが、動脈硬化が進みますと、壁がこのように厚くなって、壁の中に脂分みたいなものが溜まって、血液の流れるところがこんなに狭くなって、最後は詰まって、どの血管が詰まるかによって心筋梗塞になったり脳卒中になったりするわけです。

こういう変化が起こると、画像診断で見てみると、このような大動脈では異常に膨らんでいたり、ギザギザになっていたりします。これは、壁が弱くなっているとこぶのように膨れてきて、最後は破れて、大出血するということです。血管が弱くなると、詰まる場合と破れる場合があるんです。こういうふうな変化が起こってきます。胸の方の血管では、動脈硬化が進むと、ギザギザになってこういう変化が起こって、血液がいかなくなって、痛みが出たり、動かなくなったりします。ところが日野原先生は100歳になっても、脳も首の血管も非常にスムーズできれいでした。

動脈硬化性変化が心臓で起きますと、これは83歳の女性ですが、冠状動脈の血管が非常に細くギザギザになります。

これは日野原先生が98歳のときの心臓の血管ですが、一部が細くなっている以外は、太くきれいな血管をしています。

もう一つは脳の変化でして、これは90歳の方の脳のMRI検査の画像です。このように白くなっている部分はあまり血液がいっていません。

ところが、日野原先生は98歳のときに検査をしても、ほとんど白っぽいところがありません。いかに動脈硬化の進み具合が他の多くの方と比べて遅いかがわかります。

先生はこのような若々しい状態を保っておられたわけですが、私が14年前に京都から東京に戻って、そこからの10年間の間にこのような細かい病気はされています。例えば、鼠径ヘルニアの手術は2回されていますが、手術の翌日には講演に出かけておられました。自分が動けるようになるとすぐに病院の外で仕事をしてこられました。1日でも早く退院したいと仰っておられました。

 

心房細動、不整脈のときのエピソードは非常に印象的で、先生はスポーツをテレビでご覧になるのが好きで、女子サッカーの国際試合を見てすごく興奮して、血圧が上がって、一時的に不整脈になってしまいました。病院に来られて、心房細動という非常に不整で心臓が早く打つ不整脈になっていて、電気ショックをかけたところすぐによくなりました。

 

このようなことを何回か繰り返して、最後亡くなる本当に半年前、2016年のお正月頃までは本当に普通の生活をされていて、その後全身のいろいろな臓器の働きが徐々に低下していきました。飲み込みもうまくできなくなって、鼻や口から管を入れて栄養を補給することで延命をすることができるのですが、先生は最後まで明確に管を介した栄養補給は希望されませんでした。最後は本当に静かに亡くなられました。先生はこのような人生を送られました。

次は、先生が長寿の秘訣と思われていたことをお話します。このようなことを仰っていました。まずは小食ということですね。朝はパン1枚とジュースで、オリーブオイルもすごくお好きで、それが長生きのコツであると随分仰っていました。これが2番目の植物油ですね。それから9番がよくわからないのですが、どうして自分で洋服を買いに行くと長生きにつながるのか。でも日野原先生の頭の中ではそれがつながっているようでして、奥様にまかせっきりというのはよくないと随分仰っていました。それから体重、体温、血圧を自分で測ることも重要であると仰っていました。それ以外に、先生は10年先までの予定を書くことができる日記をずっと持っていまして、そこに随分先までの予定を入れていました。亡くなる時も数年先の講演の予定が入っていました。

2.「健康な加齢」とは

このような先生の人生でしたが、考えて見ますと、最近「健康な加齢」という言葉がございます。英語では”healthy aging”という言葉がございまして、日野原先生はまさに「健康な加齢」を重ねられた見本だと私達は考えています。健康な加齢には3つの要素があると思います。

病気は誰でも年齢と共に少しずつ増えていきます。しかし、体の機能に障害をもたらすような慢性疾患がないのが1つ目の要素です。次に、生活を楽しむことができるというのが2番目です。それから3つ目が、身体的、精神的、社会的に、制限なく自分の思い通りの活動ができることです。この3つの要素を満たすのが「健康な加齢」“healthy aging”というふうに言われています。

 

このことについて簡単にお話したいと思います。最初に慢性疾患のところですが、今、日本人の病気としては、毎日のように聞かれると思いますが、がんが一番多くて、それから心臓病がその次に多いです。それから、2011年までは3番目が脳卒中でした。4番目が肺炎、その次は不慮の事故です。これは交通事故などいろいろな事故も含みます。6番目は老衰ということだったのです。

2012年以降は順番が変わりまして、3番目が肺炎になり、4番目が脳卒中、5番目が老衰です。随分前は、私達が大学を卒業した直後は、医師は老衰という診断をつけることが、言葉は悪いですが、恥だと言われていました。老衰ということは、患者さんの体の中でどういうことが起こっているかわからない医師が最後につける診断が老衰だから、老衰という診断はできるだけつけるなというふうに教わってきました。ところが最近になってどんどん増えていて、以前のように老衰という診断をつけることは、レベルの低い医者がつけるという意識がほとんどなくなってきていまして、特に高齢者では無駄な検査をしないようにというのと相まって、できるだけ自然な死が広く受け入れられる状況になってきていまして、あまり患者さんに最後のところまで苦痛を与えるような細かいところまで明確にしようということ自体があまりいいことではないと考えられるようになって、老衰という診断を最後にする割合が随分多くなって、これはいいことだと私は思います。

癌の治療というのは速い速度で進展しておりますので、ご存知のように、ある薬で、免疫のところに作用する薬では、末期と思われていた患者さんが治ることが増えていまして、まだ何十年かかるかもしれませんが、癌で死ななくなる日が来るかもしれません。もしなくなれば、日本中の人の寿命が3~4年一気に延びると考えられています。心臓病も1.5歳程度、脳卒中も1歳程度、もしこれらがなくなれば、女性は寿命が93歳、男性は87歳まで延びると今のところ考えられています。

戦後50歳くらいだった寿命が、男性も80歳、女性も86~7歳まで延びています。

ご存知のように、今、国として一所懸命対応しようとしているのが、健康寿命を延ばすことです。これは少し前のデータになりますが、平均寿命と健康寿命の差がほぼ寝たきりの期間となり、ほぼ寝たきりの期間は健康寿命には含まれません。男性は9年くらい、女性は13年くらいが寝たきりの期間となります。社会的な活動ができない状態で13年くらい過ごすことになりますので、この期間をいかにして短くするか、国の大きな厚生行政の目標となっています。

この期間は、どういう病気で起こるのかといいますと、この4つが一番大きな原因と考えられています。

脳卒中や心不全で自由に動けない、または身の回りのことができない。それから認知症、これもいろいろな重症度がありまして、非常に軽症なところから本当に動けなくなるところまで、いろいろな方のケアが必要な例まであります。それから骨折、これも非常に大きな問題で、年齢とともに転倒・転落の頻度が非常に高くなって、多くの方が腰の骨や足の付け根の骨の骨折を起こして、それが原因で動けなくなります。それで3週間くらい完全に寝たきりになってしまうと、年齢等にもよりますけれども、その後、元の社会的な活動に戻るのが非常に難しくなってしまうこともございます。骨折がきっかけで寝たきりになるのが3番目の原因です。4番目に挙がるのが、慢性閉塞性肺疾患といいまして、よく酸素を吸入して車椅子で動く方がいらっしゃいますが、これはほぼ100%タバコのせいです。それで肺の働きが悪くなって、肺の方へいった血液にうまく酸素が取り込めなくなるのが、慢性閉塞性肺疾患です。

 

こういう4つの原因がございますので、これらをいかにして予防するかが国を挙げてやろうとしていることです。

 

特に心不全は、以前は心筋梗塞というので、心臓の筋肉を養う血管が詰まって、酸素と栄養がいかなくなって、筋肉が死んでしまうと、かつては3割くらいの方が亡くなっていたんですね。ところが最近は、心筋梗塞になってもほとんどの方は亡くなりません。治療法が非常によくなったものですから。その代わり、10年20年経つと、だんだん心臓の筋肉でうまく動かなくなった部分があるものですから、それに年齢の要素が加わり、心臓から血液を押し出す力がだんだん弱くなって、それで心不全という状態になって、少し動くと息切れがして苦しくなります。日常的な仕事も、時間とともに大変苦しくなるという状況になるわけでして、先進諸国ではこの心不全が大問題になっています。日本でもそうですし、アメリカでも心不全の患者さんが本当に多くなってきています。こういう状況です。

 

こういう病気を予防するという場合に、そもそも病気にならないようにするのが1つの方法です。それから、病気になったとしても、早く病気を発見して、重症になる前に手をうち、悪化を防ぐという2つの予防というのがありまして、ご存知のように、最初の病気にならないようにするというのは、健康増進という言い方もしますが、一次予防という言い方をします。それから早く病気を発見するのは、二次予防という言い方をしまして、これは健診、あるいはまだ症状がない、あるいはちょっとした症状しかないようなときに見つけ出して治療をしようというのが二次予防です。

ただ残念ながら、遺伝的な要素で病気になることもありますので、必ずしも全部が全部、予防の対象になるわけではないのですが、糖尿病や高血圧、動脈瘤という血管が膨れてくるような病気、コレステロール、肥満、癌などかなりの部分は予防が可能です。

ここから先は、皆さん嫌というほど聞かれているようなことですので、スキップしたいと思います。病気への対応方法をここに挙げますが、これは言われてもなかなかできないんですよね。問題は実はそこでして、そこについてのアプローチも最近はいろいろ講義がされるようになっています。そこについて触れたいと思います。

3.体の健康と心

具体的には、禁煙が世界中の全部の人の寿命をあっという間に2~3年延ばすことができると言われています。地球からタバコさえなくせば、タバコがなくなった翌日から心臓病になる人も減ります。タバコを吸っている最中に心臓の病気になったりするからです。癌になると、5~10年経たないと、やめた効果が出てきません。いずれにしても、血管の病気にとっても、癌にとっても、タバコというのは本当に元凶なのです。我々、医療に携わる者として、本当は一番効果があるのは、1人1人の患者さんに十分時間をかけて説得して、翌日からタバコをやめてもらうのが、寿命を延ばすためには一番効果があることなのです。

それから食事も非常に重要です。毎日毎日のことですが、統計学的な関連性をみますと、食事も非常に大きな要素です。

具体的には動物性脂肪、赤肉と関わる病気がかなり証明されています。ですけれでも、全く摂らないのもよくありません。実は、日野原先生がいろいろなところで、自分はあまり食べない、小食だとすごく仰っていたのです。病院で食べるのは、朝はパンとジュースとオリーブオイル、お昼もクッキー4~5枚と1パックの牛乳だけだったんです。ところが、全然夕食のことは仰らないのです。驚いたことに、ご家族の方に夕食のことを伺うと、毎週3日間はステーキを召し上がっていたようです。先生は、血液検査でのたんぱく質の数値が高かったので、さすがにどこかで摂っていないとおかしいと我々は思っていました。でも先生は仰らなかったのです。それはフェアじゃないなと思いました。これに関してだけは、日野原先生に対して文句を言いたいです。誤ったメッセージを伝えている可能性があるからです。たんぱく質は本当に必要ですが、食べ過ぎもよくないです。アメリカの方のように、赤肉を毎日何百グラムも摂っていたら、それはそれでコレステロールが高くなって、いろいろな面でよくありません。全然摂らないと、それもよくありません。そこのところは本当に中庸がよいと思います。

次は運動です。運動についても益々好ましい結果、好ましい影響があることを証明する論文がずっと出続けています。これも極端がよくないという意味でして、中間レベルの運動が一番いいということになります。明らかに余命と関わっていると言われています。

運動によって、体の中ではいろいろな変化が起こります。マラソンをやられる方がいらっしゃるかもしれませんが、マラソンのように長距離を走りますと、頭の中で麻薬が出てくるのです。体の中でつくられる麻薬の1種が出てくるものですから、外から見ていると苦しいだろうなと思われていても、走っている本人は気持ちがいいのです。

ケガをしない限り運動は本当にいいと考えられています。一番いいのは早足歩行です。ケガもしなくて、いろいろないい効果をもたらします。30分~1時間の早足歩行を週3回というのが、今のところ勧められています。運動には血圧を下げる効果もあります。最近、200kcalくらい消費する運動をやっても、案外体重を減らす効果がないのも、みんなが知っていることでして、その原因というのがよくわからなかったのですが、この数年間で、運動で消費するカロリーに見合った体重が減らない理由は、単に、これも言われたら当たり前なのですが、運動した日はその他の時間帯に動かなくなるのです。通常、体を動かしている時間帯に、運動した日は休みたくなりますよね。動かなくなるものですから、その分普通の日よりもカロリー消費が少なくて、運動した分の体重が減るということがないと考えられています。それからうつ病の予防になり、認知症に関しても、いろいろな研究でほぼ確実じゃないかと私は思っているのですが、認知症の予防、癌の予防にもなると考えられています。

ただし、心臓病とかがあったりすると、マラソンの途中で心肺停止になったりしますので、40歳以上になると、あらかじめ心臓病がないかを調べてもらってから始めた方がいいと思います。なかには、やるときには嫌々始めたものの、やり始めると中毒のようになってしまって、毎週のようにマラソンを走らないと気がすまなくなってしまう人も出てきます。そこまでいくと、これは健康によくありません。

これを全部合わせて、これは人の名前がついている40年前の有名な研究ですが、これに勝るものは今でもないのではないかと思っています。この7つの習慣を身に着けている人は、そうでない人に比べて長生きだそうです。睡眠時間、それからタバコを吸わない、体重が適正範囲、アルコールはビールでいうと中瓶1本以内というのが適度、ワインではグラス1杯程度が適度といわれています。つい最近、世界中で大掛かりな調査研究が行なわれまして、少量でもよくないのではないかというデータが出てきています。これは他の研究でも確かめられないと受け入れられません。1つや2つの情報が出たからといって、それをみんなが信じるわけにはいきませんから、今後更なる研究が行われると思います。間食をしない、それから朝食を摂らないというのは、死亡率と関係しているというデータがあります。

がんについても、このような12か条があります。

こういう予防は、1人1人の日常生活、自分の行動ですので、誰もコントロールできないのです。ですから、心の底からこういうことをしようと思わない限りはできません。どうすればより望ましい生活習慣になるかというと、本当に難しいのですが、外圧をかけるだけでは駄目です。これも明らかです。これも冗談みたいですけど、私が製薬会社の会長や社長と話をする雑誌のためのインタビューを受けたときに、「どういう薬が将来欲しいですか?」と言われ、「言うことを聞いてくれる薬を作ってほしい」と言いました。それを飲めば、タバコをすぐにやめてくれるとか、処方した薬をちゃんと飲んでくれるとか、なにしろこの薬さえ飲めば、医師の言うことを聞いてくれる、そういう薬を作ってくれませんかというのが、私の1番の望みです。

自分の行動を変えるためには、6つの段階があると言われています。

心の中の動きですけれども、最初は全然聞く気がありません。例えば、禁煙のことについてですね。それで次の段階は、少し考え始めるんですね。タバコを止めようか、止めたらどれくらいのメリットがあるのか、医者がどんどん話をすると思いますし、看護師さんからも聞かれると思います。そのことで同時にいろいろな不利益が起こりますので、いろいろなことを考え始めるわけですね。それでやってみようかと思い、その次が実際にやってみます。うまくいけば、維持期に入るわけですが、多くの場合は、元に戻ります。半分以上の人で、より望ましい生活習慣に変えた人の半分くらいはまず元に戻ります。でもそこで止めたら駄目なのです。またもう1回トライしてみる、それを何回か繰り返すことで、大抵3回繰り返すことで、身につき行動が変わると言われていますので、失敗したら駄目だということではなく、失敗するのが当たり前だと思いながら、このサイクルを繰り返すというのがいいのではないかと思います。

4.社会とのつながり

最後に、「健康な加齢」の中で、社会とのつながりというのが非常に重要視されています。社会に貢献している人は、死亡率が低いという調査研究があります。社会に貢献するといっても、ボランティアみたいに自分の時間を捧げるというタイプの社会への貢献と、寄付を含めまして、お金で社会に貢献するという、実は大きく分けると2つあります。

ボランティアなどのように時間を提供するほうがよくて、お金を出すだけではそんなに意味がないんじゃないかという、なんとなくそういう意識を多くの人が持っているんですけれども、実はお金だけを提供するのもすごく効果があり、寄付をすることによる健康面でのメリットもあるということが、最近随分調査研究で発表されるようになっています。

 

しかし、これは寄付をもらう人に都合のいい話なのですよね。あなたが寄付をしてくれたら、あなたの血圧が下がりますよという研究なんです。私も最初はすごく疑念を抱いていたのですが、原著論文をちゃんと読みました。そしたらそれなりにちゃんとした研究で、実は2種類研究が行われておりまして、186名の高血圧の患者さんを集めて、他人のために費やすお金が多ければ多いほど、高血圧のレベルが低かったという論文です。今、この時点で全員アンケート調査をしてわかるようなそういうタイプの研究なのです。他人のためにといっても全く知らない例えば患者さんとか国に寄付するものもありますし、自分の友達のためにお金を使うというのもありますし、家族のために使うというのもあります。なにしろ自分以外の人のために使うというのが、他人のために費やすという意味です。このグループは、他にもすごいことをしておりまして、73名の患者さんを36名と37名の2つの群に分けて、毎週40ドルを3回渡して、その毎週の40ドルを自分のために使う群と他人のために使う群を設定し、全部合わせて6週間後に血圧を測ったら、他人のために使った群では上の血圧も下の血圧も5ぐらい下がっていました。自分のために使った群では全然変化がありませんでした。寄付をしてもらう方にとっては、すごく都合のいい結果となっています。でもご本人のためにもなっています。もしこれがさらに他のグループにも確かめられるようになったら、日本でも寄付の文化がもう少し根付くのではないかと思っています。お金なり自分の時間なりを提供するのが、社会とのつながりということで重要な要素と考えています。今後益々こういうタイプの研究が行われるのではないかと思います。

ということで、日野原先生が105歳で亡くなったことにつなげて、「健康な加齢」についてのお話をさせていただきました。少しでもお役に立てればと思います。ご清聴ありがとうございました。

【泉大津市立病院 検査・病理センター長 四方 伸明 先生】

福井先生ありがとうございました。たまご保育園の園歌を私の妻が作詞作曲したのですが、日野原先生の音楽療法学会にも一時期入っていたことがあります。日野原先生は文化的な面にも造詣の深い先生であられたと思います。それでは、本日は本当に著名な先生に来ていただいてお話を伺いましたので、せっかくの機会ですから、質問がございましたら、していただきたいと思います。

【八尾市長 田中 誠太 様】

 先生のご講演本当にありがとうございます。八尾市民のみなさん方の健康づくりということで、「みんなの健康をみんなでつくろう」ということで、実は今年の10月の頭に八尾市は健康街づくり提案をさせていただきます。5つの要項をつくらせていただいて、それを市民の皆さんと実行していこうということなのですが、その中で常に僕自身が市民の皆さんに言っているのが、先生にご講演いただいた「ちょっとした運動・スポーツをする」「食べるものを常に気を使う」そしてまさに「社会とのつながり・社会参加」です。この3つは常に言わせていただいています。先生にその理論的なお話を裏付けていただいたかなと思っています。それと寄付の話を興味深く聞かせていただいたのですが、実は僕は市長になって12年目なのですが、「市長におまかせ寄付」というのがありまして、この12年で4億円程いただきました。そのうちの半分は、先輩から「生きている限り1億円あげる」と言われ、実は2億円までいただいたところでお亡くなりになったのですが、それは本当に社会貢献で、自分ができることはしたいということでやっていただきました。なかなかお金が潤沢にある人は気持ちよくできるのでしょうけど、僕らみたいにお金がない人はなかなかそういう気持ちになれないところがあるので、どちらかというと体でボランティアをしているのが楽しいのかなと思うところであります。そんなところで、お金がない人はどうしたらいいのでしょうか。

【聖路加国際病院院長 福井 次矢 先生】

ボランティア自体は健康との関連性が常にあります。お金とのデータはなかったものですから、最後にその話をさせていただきました。ボランティアは健康とすごく関連しているという研究データはあります。それからお金は額に関わりません。少なくても健康に対する効果はかなりあると思います。

【八尾市長 田中 誠太 様】

八尾市でもふるさと納税がありますし、赤十字の寄付であったり、本当に自分のお小遣い10円20円を子ども達が寄付を入れてくれたり、そうやって日本に寄付文化が増えてくるのではないかと思っています。また皆さん八尾市にも寄付をよろしくお願いします。

【たまごビル院長 石垣 邦彦 先生】

今日は福井先生、こんな素晴らしい講演はございません。おまかせ寄付をうち、たまごビルへ寄付していただいたら、市長自身が元気になる、市長が元気になられたら、八尾市が益々発展する。うれしい限りでございます。本日はありがとうございました。

四方先生

石垣副院長

福井先生

田中市長

石垣院長

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