top of page
健康で生きる力をつける講座
2019年5月11日

ガンを診る

​-顕微鏡で一人一人ガンを観る体験-

​前関西医科大学病理部教授

四方 伸明 先生

inchou 2.jpg

【石垣ROB医療研究所 理事長 石垣 邦彦 先生】

今日は、みなさんに大学の医学部の学生さんになっていただきます。癌細胞はどんなものか、正常細胞はどんなものか、ということを身につけていただきます。

それでは、しばたに先生よろしくお願いします。

今回の場合は癌細胞ですが、悪いものを知るにはどうすればいいかといいますと、正常なものをまず知ることが大事です。

私が提唱している健康体の特徴である『上腹部のやわらかさ』というものを知れば、異常な状態を早く捉えることができ、予防ができます。
 

ROB治療では、様々な癌患者さんを救ってまいりました。皆さんも既にご存知かと思いますが、長く来られている方は、癌細胞があっても、末期癌であっても、痛みなく最期を看取ることができます。家で最期を看取ることができます。前立腺癌で余命1年と言われた方も、もう十何年も元気に生きておられます。
 

それでは四方先生よろしくお願いします。

Dr shikata 2.jpg

【前関西医科大学病理部教授 四方 伸明 先生】

よろしくお願いします。癌というものは、命を奪う怖いものです。去年のノーベル賞は、医者の長い間の夢を叶えるような画期的な発見で、本庶佑さんが受賞されました。どういうことを発見されてノーベル賞を受賞されたのかを最初にお話します。
 

癌には放射線療法、化学療法、手術という3つのオーソドックスな治療法があります。それらとは別に、免疫療法というのがきっとあるに違いないと60年前から言われていました。ところが、思わしい結果がこれまでありませんでした。それが今回、彼がノーベル賞を受賞した仕事で、方法論的にも理屈的にも解明されました。

スライド3.JPG

体の中にはリンパ球という白血球の1種があり、リンパ球の中でもT細胞というのが主役になって癌細胞をやっつけます。ただやみくもにやっつけているわけではありません。相手をはっきりと見極めて、こいつはいけないと判断したものをやっつけます。ただ、T細胞だけではダメで、もっと頑張れというシグナルを樹状細胞が出し、アクセルを踏む役割をします。そうするとT細胞が増えます。これが大事です。

 

ただし、免疫細胞を増やすシグナルばかりですと、自己免疫疾患という正常な組織を攻撃してしまう行き過ぎた状態となります。ですから、体はよくしたもので、ブレーキの役割をしたものがあったのです。ずっとこれは長いこと誰も気がつかなかったのです。ブレーキをきかせるものがあって初めて免疫というのは調整できます。

 

PD-1というのがそのブレーキの役割を果たしていることが発見されました。PD-1というのは前からわかっていましたが、いったい何の機能を果たしているのかということは、10年かかって、やっとブレーキだということがわかりました。

スライド4.JPG

実は、癌細胞もT細胞にブレーキをかける手を持っていることがわかりました。癌細胞が自分を守るためにT細胞にブレーキをかけることになります。T細胞が癌細胞を攻撃しようとしても、癌細胞とT細胞が手をつないでしまい、攻撃をやめてくれということになりますと、T細胞が癌細胞を攻撃しなくなります。

スライド6.JPG

それを簡単に示しますと、この図のようになります。本来であれば、T細胞が癌細胞をやっつけようと槍を構えています。

スライド7.JPG

癌細胞がT細胞と手をつなぐと、T細胞は槍を落として静かになります。この手の部分がPD-1にあたり、本庶さんがその機能を発見され、なぜ免疫が癌細胞に効かないのかを解明されたのです。

スライド8.JPG

治療にどう活かすかといいますと、ここに手袋と書いてあるのが抗PD-1抗体にあたります。癌細胞が直接T細胞と手を繋いでしまいますと、T細胞は攻撃を止めてしまうわけですから、手袋をはめさせて直接触れないようにするというのがこの治療法のアイディアなのです。ブレーキのカバーになるような手袋をつくってやるわけです。そうすると、癌細胞が一生懸命T細胞の手を握ったところで、直接触れることができませんから、T細胞の攻撃は止まず、癌細胞がきれいに治るわけです。
 

今までの免疫療法というのは、とにかくアクセルをふかせることを重視していましたが、実はブレーキがあったのです。ですから、ブレーキが効かないようにしてやれば、攻撃の手が緩まないのです。こういったことが今回のノーベル賞受賞に結びつきました。
 
 私も驚きましたが、以前、前立腺癌で肺に転移があったのに腫瘍が消えたという方がこちらの患者さんでいました。実際に顕微鏡で診てみたら、確かに肺の転移結節で診ているのは前立腺癌で違いないのです。だけど、影も形もなくなっているということになりますと、おそらく癌免疫が働いて、腫瘍をやっつけたに違いないと思います。おそらくこのあたりの調整をROB治療によって行い、癌をやっつける形にしたと思われます。

スライド9.JPG

では次に、今日実際に見ていただく組織の話に移ります。今日見ていただくのは大腸癌の組織です。この図は大腸の組織を立体的に大きくしたものです。腸管というのは管になっておりまして、管の内面を覆っているのが粘膜です。粘膜というのは、上皮の細胞がこのように表面を覆っておりまして、それがピットのように凹んでいる部分を腺といいます。この細胞が癌化した場合に腺癌が発生するといいます。

スライド10.JPG

これが腺細胞の模式図です。細胞には核があり、細胞膜で取り囲まれています。この1個の細胞が癌化すると、勝手気ままに大きくなりまして、転移をして、生命を危うくします。

スライド11.JPG

組織で見ますと、この1つのマスが細胞です。そのマスの中に黒い点として並んでいるのが核です。先ほど立体的にお見せした腺の構造を縦切りにしたら、この図のようになります。赤の線のところで横切りにした場合、どのように見えるのかといいますと、次の図のようになります。

スライド12.JPG

これが輪切りの状態で、腺が2つ並んでいます。細胞も核もきれいに並んでいます。核の大きさも小さいです。これが正常な腺の輪切りの構造です。

スライド13.JPG

次に、これは腫瘍ですが、良性の腫瘍です。浸潤もしないし、転移もしません。癌になる前の段階の腫瘍です。腺自体は増えていますし、ご覧のように細胞自体も増えています。しかし、丸い形は変わりません。

スライド14.JPG

癌になると、こうなります。同じように腺腔はありますが、形はバラバラで、核はとても大きくなって、行儀良く外側に並んだりしていません。浸潤もしますし、血管の中に入ると血行性に転移します。

スライド15.JPG

次は実際の組織でお見せします。これが正常の腺です。核が外側に規則的に並んでいます。1つの腺に対して1つの腺腔があります。細胞が粘液を貯めておりますので、こういう明るい感じになります。

スライド16.JPG

これが腺腫、つまり良性の腫瘍です。腺の周囲はスムーズなラインをとっておりますが、この腺の中に細胞がたくさん並んでいます。核も小さく並んでおらず、押し合い圧し合いしている状態です。

スライド17.JPG

そして問題の癌です。個々の腺の構造がバラバラです。核も上に行ったり下に行ったり、大きなものがあったり小さなものがあったりします。浸潤もしています。私達病理医は、この形を診て判断しています。

スライド18.JPG

それでは次はクイズです。黄色の矢印の部分は、癌でしょうか、腺腫でしょうか、正常細胞でしょうか?

スライド19.JPG

正解は正常腺です。粘液が真ん中にあり、核が周囲に規則正しく並んでいます。

スライド20.JPG

それでは、次に行きましょう。オレンジ色の矢印の部分と青色の矢印の部分は、それぞれ癌でしょうか、腺腫でしょうか、正常細胞でしょうか?

スライド21.JPG

正解は、オレンジ色の方が正常腺、青色の方が腺腫です。

スライド22.JPG

それでは、次に行きましょう。赤色の矢印の部分と黄色の矢印の部分は、それぞれ癌でしょうか、腺腫でしょうか、正常細胞でしょうか?

スライド23.JPG

正解は、赤色の方が癌、黄色の方が正常腺です。

スライド24.JPG

これが最後です。これは癌でしょうか、腺腫でしょうか、正常細胞でしょうか?

スライド25.JPG

これは癌です。
後は実際に顕微鏡を見ていただきます。順番に前に来て顕微鏡を覗いてください。
ありがとうございました。

【石垣ROB医療研究所 理事長 石垣 邦彦 先生】
 

四方先生ありがとうございました。このように正常なものがどういうものかわかれば、正常ではないもの、異常なものがわかります。上腹部のやわらかさを御自分で感じとれれば、上腹部のやわらかさに異常があれば、ある程度御自分で異常を感じることができます。そうすれば予防につながります。どんな医学的な科学的な検査よりも非常に敏感です。私達はそういう体の仕組みを持っているものですから、それを有効に生かしていくことが一番大事です。人間は、外からものを入れてなんとかよくしてもらおうと、他力本願になりがちです。そうではありません。一番いい例が、納豆がいいと聞くと、その日の晩から納豆がスーパーの店頭からなくなってしまいました。サプリメントも同じです。サプリメントを飲んで、自分自身の日々の行いをなんとかしてもらいたいということです。全ての薬が悪いとは言いませんが、薬もその延長線上にあります。口からものを入れて、なんとか帳尻を合わせてもらいたいなというのが人間の本能なのです。そこをなんとかしようではありませんか。体の仕組みがスムーズに動く状態=上腹部がやわらかい状態が絶えず生まれる生活を送り、困難なときは治療をしていただいて、治療効果を保持できるような養生法を家でも行うことが大事です。難しいことは何もありません。ただ今まで世界の人々が気付かなかっただけのことなのです。
 

今日は癌細胞を見る、異常な細胞を見るということを行いましたが、それを見極めるには正常細胞を知ることが大事です。人間の体には40億年の間に培われた仕組みがあります。我々の体の仕組みの中で、我々の体がスムーズに働く状態=上腹部のやわらかさを維持するということに尽きてきます。今まで人類が気付かなかった部分を私が世界で初めて提案しています。それを普及していこうという段階になってきました。非常に大きな試金石となってきます。皆さん方にもご協力いただいて、ぜひ世界人類に普及していきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

bottom of page