健康で生きる力をつける講座
2019年3月9日

認知症の予防等について

​(知っておくべき認知症の最新知見)

​社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員

しばたに 匡哉 先生

【石垣ROB医療研究所 理事長 石垣 邦彦 先生】

本日は、前府会議員のしばたに匡哉先生に認知症の予防等について講演をしていただきます。しばたに先生は医療の専門家ではありませんが、府民のために府会の方で厚生行政一筋に尽力されてこられました。今回また、府民のために力を尽くしたいということで、認知症と介護の現状についてお話をしていただきます。
 

それでは、しばたに先生よろしくお願いします。

【社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員 しばたに 匡哉 先生】

よろしくお願いします。最近、物忘れが多くなってきたと感じておられる方もいらっしゃると思いますが、皆さんの物忘れと認知症は異なるものであることなどを本日はお話したいと思います。私は高齢者施設を以前からやっておりまして、現場の話を聞きたいという依頼を受けて、4年程前からいろいろなところで認知症に関する講演をさせていただいております。

皆さんにまず知っていただきたいのは、少子高齢化・人口減少化社会についてです。これから、新聞やテレビなど、いろいろなところでこの言葉が取り上げられてきます。これらは日本の喫緊の課題です。これらの問題をどう解決するかが日本にとって重要であると私は確信しています。

少し古いデータになりますが、日本の65歳以上の人口は2960万人で、カナダの総人口は3402万人です。今から約30年後の2025年には、日本の65歳以上の人口は3500万人になると言われています。そうなると、日本の65歳以上の人口の方が、カナダの総人口よりも多くなるわけです。

 

また、日本の80歳以上の人口は860万人です。オーストリアという国の総人口は840万人なので、日本の80歳以上の人口の方が、オーストリアの人口よりも多いということです。
それぐらい日本のお年寄りの数が多いということです。

その理由は簡単です。1970年あたりからずっと出生率が減って、子どもの数が増えないからです。私も政治をやってきましたが、政治の中で一番難しいのは少子化対策です。

新聞にも取り上げられていますが、少子化対策に特効薬はありません。若い人が結婚して、子どもを産めばいいという話ではなく、今は女性も働きますし、保育所はどうするのか、といった様々な問題が重なりあって、今はなかなか子どもを産んでくれない時代になってしまったというのが少子化の原因です。原因はわかっていますが、それに対する特効薬が見つかっていないというのが、政治の中で言われていることです。

平安時代まで遡ると、日本には600万人ぐらいの人がいました。江戸時代で1227万人でした。ちなみに、大阪の現在の人口で880万人です。そして、明治維新で3330万人でしたが、終戦の時で7199万人となり、日本の最高の人口は2010年に1億2806万人でした。このように、日本の人口は近年急に増え、2010年を境に急速に減っていきます。

このまま行きますと、2017年には人口が1億2653万人になり、100年後には5060万人になると言われています。だいぶ先ですが、西暦3000年には、人口が2000人になると言われています。つまり、日本という国は西暦3000年には潰れてしまいます。中国やアフリカは人口がどんどん増えています。日本だけ人口がどんどん減っていって、消滅するかもしれないと言われています。これが日本の大きな課題です。

日本で100歳以上の方は約7万人います。そのうち61454人は女性で、男性は8331人です。実に94%が女性です。八尾では、100歳以上の方が111人おられますが、そのうち100人が女性です。圧倒的に女性が長生きなのです。

約100年前は、平均寿命が女性は44歳で、男性は42歳でした。2010年で女性の平均寿命が86歳、男性が79歳でした。今はもう少し延びていますが、要するに、100年間で寿命が2倍になっているのです。それだけ医学が発達してきています。
 

もう一つ見ていただきたいのが、55年前の1963年に日本の100歳以上は153人しかいなかったのです。今は7万人です。それが2050年には68万人になると言われています。100歳以上が当たり前の時代になります。

高齢化率でいうと、日本が断トツの1位です。

高齢化に至るスピードでは、フランスは115年かかってゆっくりと高齢化に至ったのですが、日本はたった24年で高齢化に至りました。

また、OECD加盟国で認知症の割合は日本がワーストです。
日本が直面している高齢化や介護、認知症の問題は、世界が経験したことがないのです。世界は、日本がこの問題にどう対応するのかを見ています。

日本は今、介護などを手探りの状態でやっているわけですが、2012年に9.1兆円かかった介護費用が、2025年には21兆円かかるといわれています。介護と医療は両輪と言われており、介護だけでなく、医療にも多額の費用が必要とされています。

今年、消費税が10%になると言われています。消費税が1%上がると、税収は2兆円増えると言われています。2025年には消費税を18%にしないと、今の医療と介護の制度は保てません。2040年には、消費税を23%にしないと、消費税だけで賄うのは難しくなります。ということは、これからどんどん医療費や介護費の自己負担額が増えていき、サービス内容が切られていく可能性があります。財源がないからです。消費税増税の話も、今後続く可能性があります。

では、次に認知症の予防についてお話します。認知症になったからといって終わりではありません。

認知症は、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態のことを指すと言われています。認知症の人の数は、びっくりするくらい増えていっています。

認知症と軽度認知障害の人を合わせて、800万人と言われています。

認知症の人の予後は、6年と言われています。

認知症の「前段階」の人の46%が回復すると言われています。

認知症は、だれでもかかりうる病気です。完全に回避する方法はありませんが、かかりにくくすることはできます。早期の治療によって症状の進行を遅らせることができます。認知症の発症を5年遅らせることが出来れば認知症の患者数は半数以下になります。認知症の発症を5年遅らせることができれば、健康寿命を延ばすことができ、介護で家族の世話にならず、病気で亡くなる方が増えます。

認知症には、アルツハイマー型など主に4つの型があります。このうち60%はアルツハイマー型認知症で、約20%は脳血管型認知症です。アルツハイマー型が非常に多いのです。

10年前は、今と違って脳血管性認知症が多かったのですが、今はアルツハイマー型認知症が多くなっています。

認知症といっても、1つではありません。どのタイプの認知症であるかを知っておいていただきたいと思います。

認知症になると、中核症状と周辺症状といわれる症状が起きます。中核症状とは、記憶障害・判断力低下・時間や場所がわからない・話している言葉が理解できないといった症状です。周辺症状は、怒りっぽくなる、意欲がなくなる、不安・幻覚、一人で歩きまわるといった症状です。周辺症状が出てくると、家族さんはとても大変になります。我々、施設にいますと、大体シグナルとして見るのが、『お金がなくなった』ということです。これが出てくると、シグナルが出てきたなと我々施設では思っています。認知症の方の『お金がなくなった』というのは普通の『お金がなくなった』とは違います。『誰々が盗った』とおっしゃいます。これが典型的な症状です。これが出てきたら、次に出てくるのが『ご飯を食べていない』ということです。それが段々とひどくなって、昼夜逆転とか色々な症状が出てくるのがシグナルです。

人間の記憶力は20代をピークに加齢とともに減退します。60歳頃になると、記憶力に加えて判断力・適応力などに衰えがみられるようになり、知能の老化が始まります。物忘れは単なる老化の一つです。

例えば印鑑がなくなったとします。認知症ではない普通の物忘れは、印鑑がなくて探していても、3日前には宅配便が来たから使ったなと、思い出します。認知症の方の『印鑑がなくなった』というのは、印鑑のことすらわからないのです。

右側の図が頭の中の状態とします。青い部分が健常な状態で、赤い部分が忘れてしまった部分とします。普通の物忘れであれば、青の健常な部分を使いながら、赤の忘れてしまった部分のことを思い出します。認知症の方であれば、この赤い部分がごっそりと抜け落ちてしまいます。典型的なのは、若い頃のことはよく覚えておられて、施設の職員に学生時代の話をたくさんしてくださいますが、お孫さんや子どもさんが来られると「あれは誰?」とおっしゃいます。物忘れと認知症は構造的に違うということを知っておいてください。

アルツハイマー型認知症は多いと言われていますが、脳にアミロイドベータとタウというたんぱく質がたまり、正常な神経細胞が壊れ、脳萎縮がおこることが原因だと言われています。しかしながら、アミロイドベータやタウが蓄積する原因については明確なことは分かっていません。近年、糖尿病や高血圧などの方はそうでない方よりもアルツハイマー型認知症になりやすいことが科学的に証明されました。そのため、予防には生活習慣の改善が重要であるとされています。メタボや太り気味の方がよくありません。太ったら駄目なのです。

これが認知症の方の脳の断面です。中期になってくると、段々脳が萎縮してきて、隙間が増えてきます。末期になってくるとさらに脳の萎縮が進みます。この段階になると、言葉も発せられなくなりますし、食事も自分でできなくなります。
 

右側の絵は、イタリアのプロの画家が描いた自画像で、5年の間にアルツハイマー病が進行し、プロの方でも年々自画像が描けなくなっていきます。自分の記憶や経験がなくなっていくというのが認知症の怖いところです。

普通でしたら、長い年月をかけて認知症は進みます。一番やってはいけないのが入院です。大体、認知症の方は徘徊され、歩き回られ、転倒されます。手をついて骨折するくらいであれば、ギプスを巻いて帰ってこられますが、大腿骨を骨折したら入院となります。入院したらびっくりするくらい認知症は進みます。また、高齢期における2週間程の寝たきり生活によって、7年分の筋肉も失われると言われています。

認知症の方は動き回られるので、ベッドに4点柵を置きたくなりますが、それだけで身体拘束になります。医療の世界では、認知症の方の3割は身体拘束になっています。なぜなら点滴を打っても、認知症の方は抜いてしまうからです。これが昨年の新聞で大きく取り上げられました。認知症の方はこれから増えていきますので、この問題は今後注目されることになると思います。

皆さんに知っておいていただきたいのは、認知症の方は物忘れから始まります。そしてお金がなくなったと言い始め、誰々が取ったとおっしゃいます。その次は、ご飯を食べていないとおっしゃいます。

認知症の方は、歩き回られますので、転倒し、そのまま入院となります。入院すると、ずっと天井を見ていらっしゃるので、刺激がなく脳が動かないので、一気に認知症が進みます。そういう形で最後は寝たきりとなり、寝たきりとなると上下肢の拘縮が起こります。また寝たきりとなると、ご飯も食べなくなってきて、引っかかるようになりますので、誤嚥性肺炎が起こります。認知症の方は、最後、誤嚥性肺炎で亡くなります。

ごみ屋敷も認知症の典型的な症状です。きれい好きだった人もお風呂に入らなくなります。自分が臭いとかもわからなくなります。

認知症のサインが何個あるか、ご自分でも確かめてみてください。こういうのが出てくると気をつけてください。

我々の施設でも、「夜中になると怖い人がいる」とおっしゃる利用者の方がおられました。夜中にナースコールが鳴ったので、様子を見に行くと、その『怖い人』として指さしていたのは、鏡に映ったご自分の顔でした。それを見た瞬間、この人はもう認知症になっていることがわかりました。その方は、日中は、部屋から食堂や大浴場に自分で来られ、普通に過ごされていましたので、日中の様子を見ていただけではわかりませんでした。ただ、夜に部屋に帰ると、認知症の症状が出ていたのです。

認知症の方への対応はどうしたらいいのかといいますと、物が見つからないと訴える場合は、間違いを正そうとせず、相手を責めず、協力して一緒に探してみてください。ただし、見つけてもそのまま返してはいけません。その日から皆さんが犯人扱いされます。親切に見つけた人が犯人になってしまいます。できるだけ一緒に探すふりをしながら、見つけても、その人の後ろにそっと置くなどして、自分で見つけるようにしてあげてください。認知症の方は口による攻撃力は強いです。足は元気なので、スーパーや病院でいろいろなことを言いふらします。知らない人が聞いたら本気にされますので、侮れません。

我々の施設で、どんなことをしているかと言いますと、「みほとさん」という言葉を使っています。認める、褒める、肯定する、賛同する、の頭文字を取って、みほこさんと言っています。認知症の人は驚かせない、急がせない、自尊心を傷つけないことが大事です。また、5つのポイントとしては、まずは見守る、お声かけは1人で行う、後ろから声をかけない、相手の目線に合わせてやさしい口調で、相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応するというのが基本です。

これは、クリスティーン・ブライデンさんという方が書かれた本です。この方は、オーストラリアの官僚で、46歳の時に若年性認知症になって、自分のことを自分で本に書かれました。

どういうことが書かれているかというと、『記憶に残るのはあなたが何を言ったかではなく、どんな風に話したか』ということです。認知症の人には、目の前にいる人の顔しか映っていないということです。認知症の人には、なぜかわからないけど怒っている人が目の前にいる、不安だ、ということになります。怒られている理由もわからないのです。ブライデンさんの報告から出た新しい介護の方法として、バリデーションというのがありまして、それは肩をまわすなど触れ合いながら、優しくゆっくり話してあげて、いろいろと聞いてあげる介護の手法です。

アルツハイマー型認知症の予防と症状の改善策として、30分程度の昼寝がよいと言われていまして、昼寝をするとアルツハイマーの発症リスクを5分の1に出来ると言われています。

2つの質問で認知症かどうかがわかると言われています。『あなたは何歳ですか』『あなたは何年生まれですか』という簡単な質問です。どちらかが答えられれば98.8%の確率で認知症ではないということです。両方答えられない人は、認知症かどうか精密検査が必要だということになります。

認知症を完治する方法は現代の医学にはありません。薬を使ったとしても記憶力がすごくあがるわけではありません。飲み始めたところをキープするのが精一杯と言われています。

認知症を予防する上で大事なのは食事と運動です。野菜とか果物をよくとってください。特に皮にポリフェノールや色素フラボノイドが多く含まれているといいます。日本は皮を捨てる文化です。しかし、その皮にいい成分が含まれていると言われています。それ以外にも、カカオ、コーヒーなどもいいと言われています。しかし、コーヒーでもそこに砂糖やミルクをたっぷり入れたら一緒です。ブラックで飲んでください。赤ワインがいいと言われているのも、ぶどうを皮ごと醸造しているからです。魚もいいと言われています。最近は油もよくないと言われています。商業用の油は、使いまわしをするので、よくないと言われています。いいものを口にすることを心掛けてください。

運動と笑いというのも、最近すごく大事だと言われています。

男性よりも女性の方がよく笑うと言われています。年代とともに声を出して笑う頻度は少なくなり、特に70歳代以降でその傾向が強くみられます。「ほとんど笑う機会がない人」は「ほぼ毎日笑う人」に比べて、2.1~2.6倍ほど認知機能が低下するリスクが高くなります。

頭と体を使う運動を継続すると、認知症「前段階」の46%が回復すると言われています。ウォーキングをするのであれば、ひとつの目安は5000歩です。

骨、筋肉、血管、脳に刺激を与えましょう。安静にしていてはダメです。筋力は弱く、細く、硬くなります。骨に刺激を与えると、骨細胞の免疫力がアップし、老化予防になります。またいい知識は続けないとダメです。たくさんの管を通されて生きるようなスパゲティ症候群にならないためにもやっていってください。ウォーキングをする際も、なるべく太ももを上げたり、踵に刺激を与えることを意識してください。

次に皆さんにぜひ知っていただきたい判例があります。名古屋でおじいさんが鉄道事故に遭って亡くなりました。すると、JR東海がその方の奥さんと子どもさんを訴えました。一審は、「妻と長男は720万円を支払え」という判決でした。二審は「妻は360万円支払え」となり、最高裁では「妻も長男も賠償責任なし」という判決になりました。この裁判は10年かかりました。最終的に賠償責任なしということになった理由としては、妻も子どももしっかりと介護をしていたとみなされたからです。しかし、裏を返せば、介護をしっかりとやっていなければ、賠償責任を問われる可能性があります。

 

今回は、鉄道事故でJR東海に訴えられましたが、これから認知症の方が増えてくると、認知症の方は加害者にも被害者にもなる可能性があります。例えば、認知症の方が自転車に乗っていて、お年寄りの方をひいて殺してしまって、その家族が訴えてくる可能性があります。
どうしたらいいかといいますと、一つは個人保険に入っていただくしかありません。

もう一つは、行政がいろいろな形で関わっていかなければなりません。例えば、神戸市では認知症による事故賠償に救済制度が創設されました。

介護をめぐる殺人もたくさん起きています。それぐらい家で介護をするのはすごく大変です。
認知症のことをよく知っていただいて対応していくことが大切です。自分一人ではなく、家族や近所の方を巻き込んで認知症の方を支えていかないと、支えていくことはできません。行政を含めて、色々と考えていかないと、これからの少子高齢化社会では大きな問題になってくると思います。これから人生100歳時代と言われていますが、100歳になったことを喜べる社会を築いていかなければならないと私は思います。

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